訪問リハビリ

「退院後、自宅での生活に不安がある」

「リハビリに通うのが難しい」

訪問リハビリは、このような方々に必要なサービスです。

病院や施設に通わず、住み慣れた自宅で安心してリハビリを受けられるため、近年、利用される方が増えています。

本記事では、「訪問リハビリとは何か」という基本情報から、対象者・サービス内容・費用・利用までの流れ、さらには訪問リハビリのメリット・デメリットやよくある質問まで、わかりやすく解説しています。

訪問リハビリの利用を検討されている方やご家族の方は、ぜひ参考にしてください。

目次

監修者

岩崎 宏紀
老人保健施設ビハーラ寿苑 理学療法士

岩崎 宏紀

代表的な資格
理学療法士
登録理学療法士
地域ケア会議推進リーダー

訪問リハビリとは

「訪問リハビリ」とは、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)といった専門職が、医師の指示のもと利用者様のご自宅を訪問し、リハビリテーションを提供するサービスです。

病院の外来リハビリや、施設の通所リハビリ(デイケア)の利用が難しい方に、ご自宅で安心してリハビリを受けることができる/ご家族への介助方法のアドバイスや、日常生活の中のお困りごとをその場でご相談いただけるなど、訪問リハビリならではのメリットがあります。

介護保険サービスの一つとして提供されており、厚生労働省は以下のように定義しています。「住み慣れたご自宅で、その人らしい生活を取り戻すこと」を目的としたサービスと言えます。

介護認定を受けられるのは、基本的には65歳以上の方が対象ですが、40歳から64歳までの方でも「特定疾病」に該当する場合は、要支援・要介護の認定を受け、訪問リハビリの対象となることができます。
「特定疾病」については、厚生労働省により疾患が定められています。

参考:厚生労働省 特定疾病の選定基準の考え方

在宅医療が求められている理由

①外出が難しいなどの理由で体を動かせない生活

身体機能の低下や、交通手段の確保が難しいといった理由から、自宅での生活を余儀なくされている方が多くいらっしゃいます。ご自宅に引きこもった生活が続くと、入院中や通院中に回復した身体機能が、徐々に低下してしまうリスクがあります。その結果、歩行や立ち上がりといった基本動作が困難になり、生活に大きな支障をきたすことも少なくありません。

②退院してもリハビリテーションを続けることが大切

リハビリテーションは「発症から早期の期間」だけでなく、「生活期」と呼ばれる発症後1年以降も継続することが大切とされています。近年の研究では、生活期においても適切なリハビリを続けることで、歩行能力の向上や生活の質の改善が期待できることがわかっています。

訪問リハビリは、病院を退院された方や、通所が難しい方がご自宅で安心してリハビリを続けられるよう、利用者様一人ひとりの生活環境に合わせたリハビリを提供しています。ご自宅という実際の生活の場でリハビリを行うことで、日常生活に直結した課題に取り組みやすく、より効果的なリハビリを実現できる点も、大きなメリットです。

参考:脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕
諸橋勇. “脳卒中患者に対する課題指向型アプローチ─ 課題指向型アプローチと運動学習に基づいた介入の考え方─.” 理学療法学 Supplement Vol. 45 Suppl. No. 1 (第 52 回日本理学療法士協会全国学術研修大会 講演集). 日本理学療法士協会 (現 一般社団法人日本理学療法学会連合), 2018.

訪問リハビリの対象となる方

訪問リハビリは、介護保険制度において「要支援」または「要介護」の認定を受けている方が対象となるサービスです。要支援の方の場合は、正式には「介護予防訪問リハビリテーション」という名称で提供されていますが、リハビリ内容やご自宅でサービスを受けられる点に大きな違いはありません。

介護認定を受けられるのは、基本的には65歳以上の方が対象ですが、40歳から64歳までの方でも「特定疾病」に該当する場合は、要支援・要介護の認定を受け、訪問リハビリの対象となることができます。 「特定疾病」については、厚生労働省により疾患が定められています。

参考:厚生労働省 特定疾病の選定基準の考え方

また、必ず医師の指示書が必要です。当グループ介護老人保健施設ビハーラ寿苑の訪問リハビリでは、サービス開始前に当苑の管理医による診察が必要となります。さらに、サービスを継続する場合は3か月に1度、医師の診察が必要です。

実際に利用しているのはこんな人

実際に訪問リハビリを利用されている方の例をご紹介します。

例① 脳梗塞による片麻痺で介護認定を受けた方

自宅リハビリのイメージ

脳梗塞の後遺症で片麻痺が残ってしまった方が、訪問リハビリを利用されています。

この方は、「自宅の中を自分の足でしっかりと歩けるようになりたい」という強い思いを持っておられ、病院でのリハビリを終えた後も、ご自宅での生活に必要な動作の改善を目指して、訪問リハビリを開始されました。 自宅という生活の場でリハビリを行うことで、実際の生活動線に合わせた訓練ができるため、転倒予防や動作の安定につながっています。

例② 外出の機会が減ってしまった方

自宅リハビリのイメージ2

「一人で外出するのが不安」「通いのリハビリ施設に行くのは気が進まない」という方も、訪問リハビリを利用されています。
ある方は、体を動かす機会が減り、ご自身の身体に衰えを感じた不安から、病院受診以外で外出する機会がほとんどなくなってしまったそうです。
このまま身体を動かす機会が減ると、筋力低下や生活動作の衰えが進んでしまう可能性があるため、訪問リハビリを利用することになりました。
ご自宅にリハビリ専門職が訪問し、無理のない範囲で体を動かす機会を作ることで、日常生活の維持・向上を目指しています。

訪問リハビリに医療保険が適用される場合

通常、訪問リハビリは介護保険のサービスとして提供されていますが、以下のようなケースでは、医療保険が適用される場合もあります。

  • 40歳未満の方で、訪問リハビリが必要な場合
  • 40歳~64歳の方で、厚生労働省が定める特定疾病に該当しない方
  • 介護保険の要支援・要介護認定を受けていない方(要介護認定の申請前や、認定が非該当だった場合など)

利用時の注意点

医療保険で訪問リハビリを利用する際には、1か月ごとに医師の指示書が必要となります。また、利用できる回数や時間には制限がありますので、事前にかかりつけ医や担当の相談員、ケアマネジャーにご相談ください。

なお、当グループの介護老人保健施設ビハーラ寿苑では、介護保険の訪問リハビリのみを提供しております。医療保険での訪問リハビリをご希望の場合は、他の医療機関でのご利用となります。 適用される保険の詳細については、一目でわかるフローチャートをご用意していますので、ぜひご活用ください。

訪問リハビリと通所リハビリの違い

介護保険のリハビリサービスには「訪問リハビリ」と「通所リハビリ(デイケア)」があります。それぞれの違いを解説します。

利用場所の違い

  • 訪問リハビリ ご自宅にリハビリの専門職が訪問し、自宅環境でリハビリを実施
  • 通所リハビリ ご自身で、または送迎を利用して施設に通い、リハビリを受ける

両者の最大の違いは、リハビリを受ける場所の違いです。
また、通所リハビリでは、リハビリ以外にも入浴や食事の提供が行われる施設もあり、半日〜1日単位で通うことが多いという違いもあります。

リハビリ内容の違い

提供できるリハビリ内容にも違いがあります。

通所リハビリでは、施設内に各種リハビリ機器や設備が整っているため、幅広いリハビリを受けることができます。 一方、訪問リハビリはご自宅という限られた環境で行うため、施設のようなリハビリ機器は使用できません。しかしその分、実際の生活場面に即した訓練ができるという大きなメリットがあります。たとえば、「自宅内での移動」「ベッドからの起き上がり」「玄関の段差を安全に昇降する」など、日常生活に直結した動作訓練を重点的に行えます。

通所リハビリと訪問リハビリ、どちらを選べばいいの?

「通所リハビリ」と「訪問リハビリ」、どちらを選べばよいか迷われる方は多いかもしれません。しかし、どちらが正解という決まりはありません。 大切なのは、ご本人やご家族が今の生活で「どんなことに困っているのか」を明確にすることです。

たとえばこんなふうに、人のお困りごと、希望はそれぞれですよね。

「通うのが難しい」
「自宅での動き方に不安がある」
「人と関わる機会を増やしたい」
「体力をつけたい」

お困りごとを明確にした上で、ケアマネジャー(介護支援専門員)にご相談いただければ、状況やご希望を踏まえて、通所リハビリ・訪問リハビリのどちらがより適しているかを一緒に考えてくれます。

サービスを選ぶ際は、「どのサービスを使うか」ではなく、「どんな生活を送りたいのか」「何を改善したいのか」という視点を持つことが大切です。 困りごとや目標を整理したうえで、ご自身にとって最適なリハビリサービスを選んでいきましょう。

訪問リハビリのメリットとデメリット

訪問リハビリには、ご自宅でリハビリを受けられるという大きな魅力がありますが、一方で注意しておきたい点もあります。それぞれのメリット・デメリットをまとめました。

訪問リハビリのメリット

● 通院の負担がない
病院や施設まで移動する必要がなく、ご自宅で安心してリハビリを受けられます。

● 生活環境に合わせた実践的なリハビリ
実際の生活環境で行うため、生活動作の改善に直結しやすく、利用者様が気づかなかった課題にもその場で対応できます。

● ご家族がリハビリの様子を見学・相談しやすい
訪問時にご家族が同席し、介助方法のアドバイスを受けられるのも大きなメリットです。

感染症リスクが少ない
外出する必要がないため、施設利用に比べて感染症リスクを抑えられる点も安心です。

訪問リハビリのデメリット

● プライベート空間に他人を迎えるストレス
ご自宅にリハビリスタッフが訪問することに、抵抗を感じる方もいらっしゃいます。

● 家事負担が増えることも
訪問時に備えて掃除や準備を行うことで、ご家族の負担が増える場合もあります。

● リハビリ設備が限られる
訪問リハビリでは、持ち込める道具が限られるため、施設のような充実した機器を使った訓練は行えません。

● 他人の目がないことのデメリット
通所リハビリに比べ、周囲の利用者やスタッフの目がないため、リハビリへのモチベーション維持が難しいと感じる方もいます。

介護・看護サービスではない
あくまでリハビリ専門のサービスであり、介護や看護を目的としたサービスではない点に注意が必要です。

訪問リハビリのサービス内容

訪問リハビリでは、専門職がご自宅に伺い、以下のような幅広いサポートを行っています。

健康状態の確認

リハビリ開始前に、血圧・脈拍・酸素濃度・呼吸数・体温などを測定し、体調を確認します。必要に応じて食事や排せつの様子など、生活全般の健康管理も行います。

身体機能の維持・改善

関節可動域練習
関節の動きを保つための運動

筋力強化訓練
筋力低下を防ぎ、転倒予防や動作能力向上を目的としたトレーニング

ADL訓練(日常生活動作訓練)
ベッドからの起き上がりや、トイレ動作・歩行・車への乗り降りなど、生活に必要な動作の練習をご自宅で行います。

環境調整・福祉用具の提案

ご自宅で安心して生活できるよう、手すりの設置、段差の解消、家具配置の見直しなど、環境面の調整もご提案します。また、身体の状態に合った福祉用具(歩行器、車いす、オムツなど)の選定・提案も行い、ご家族の相談にも対応します。

ご家族・ケアマネジャーとの連携

ご本人だけでなく、ご家族の介助方法や生活上の悩みについてのご相談にも対応しています。たとえば、「車いすでは外出できない」と思い込んでいたご家族に対して、外出の可能性や方法をお伝えすることもあります。 また、リハビリの際に気づいた身体機能や精神面の変化は、ケアマネジャーとも密に情報共有し、必要に応じて他の介護サービスと連携を図っています。

訪問リハビリ利用開始までの流れ

訪問リハビリを利用するまでには、いくつかの手続きや準備が必要です。主な流れは以下のとおりです。

  1. 要介護認定を受ける

    訪問リハビリを利用するには、要支援・要介護認定を受けていることが条件です。まずは市区町村へ申請し、認定を受けましょう。

  2. ケアマネジャーへ相談

    介護認定を受けた後は、担当のケアマネジャーに相談します。現在の生活状況やお困りごとを伝え、訪問リハビリの利用を希望していることを伝えます。

  3. 事業所への連絡・説明

    ケアマネジャーが訪問リハビリを提供する事業所へ連絡し、サービス利用の調整を行います。その後、事業所からご利用者様・ご家族様へサービス内容の説明があります。

  4. 利用の意思決定

    説明を受けたうえで、訪問リハビリの利用を希望される場合は、正式に利用の意思をお伝えください。

  5. 医師の診察・情報提供

    ご利用には、かかりつけ医からの「診療情報提供書」が必要です。
    当グループの介護老人保健施設ビハーラ寿苑でサービスをご利用いただく場合は、当苑の医師による診察も必要です。

  6. ケアプラン作成・担当者会議

    ケアマネジャーが、訪問リハビリを含むケアプランを作成し、関係者が集まる担当者会議を実施します。

  7. サービス開始

    すべての準備が整い次第、訪問リハビリのサービス開始となります。

訪問リハビリの選び方

訪問リハビリを利用する際に大切なのは、ご自宅に来てくれるスタッフとの相性です。

リハビリは継続して行う医療なので、信頼できるスタッフと安心して取り組めることが大きなポイントになります。

もし、担当のスタッフとの相性が合わないと感じた場合は、無理せず担当のケアマネジャーに相談してみましょう。必要に応じて、スタッフの変更や他の事業所の検討も可能です。 サービスの内容だけでなく、「どんな人とだったら一緒にリハビリを続けられるか」という視点も大切に、訪問リハビリを選んでみてください。

訪問リハビリの利用頻度

訪問リハビリは、ご利用者様の身体状況や目標、生活環境に合わせて、利用頻度を調整できます。一般的には、週1回〜2回のご利用が多く見られます。(厚生労働省が公開している資料でも、月4~5回、1回40分程度の利用が多い傾向にあるとされています。)

  • 週1回40分程度からスタートする方
  • 状態やご希望により、週2回・1回60分の頻度で行っている方
  • 状態が安定している方は、隔週で1回40分 など

参考:厚生労働省 訪問リハビリテーション(参考資料)

訪問リハビリの設備基準と人員基準

訪問リハビリを提供するためには、厚生労働省が定める基準を満たす必要があります。

人員基準

訪問リハビリのサービス提供には、以下の専門職が配置されています。また、訪問リハビリのスタッフは、その施設で専従していない職員が担当することが義務づけられています。

  • 医師 ご利用者様の健康状態を確認し、リハビリの指示を出します。
  • 理学療法士(PT) 歩行や立ち上がりなど、基本的な動作の改善をサポート
  • 作業療法士(OT) 着替えや家事など、日常生活動作の練習を担当
  • 言語聴覚士(ST) 言語障害や嚥下(飲み込み)のリハビリを担当

設備基準

訪問リハビリを提供できるのは、以下のいずれかの施設に限られています。厚生労働省の基準に基づき、適切な体制を整えた上で訪問リハビリを実施しています。

  • 病院
  • 診療所
  • 介護老人保健施設
  • 介護医療院

訪問リハビリの費用について

訪問リハビリの費用は、利用回数やサービス内容、ご本人の介護度などによって異なります。また、自己負担割合(1割〜3割)によっても金額が変わります。

具体的な料金については、ご利用者様ごとに異なります。 概算の費用は、下記の料金シミュレーターでご確認いただけますのでご確認ください。なお、正確な費用は、各施設もしくはケアマネージャーへお問合せください。

訪問リハビリに関するよくある質問

Q. 訪問リハビリはどの地域まで対応していますか?
A. 一般的には片道20〜30分程度の範囲が目安となります。
対応エリアは事業所ごとに異なります。詳しい対応エリアについては、各事業所へお問い合わせください。

Q. 退院日に訪問リハビリを利用できますか?
A. 退院当日の訪問リハビリ利用はできません。
ただし、退院前から訪問リハビリの利用を希望されていることを事前に伝えていただくことで、退院後スムーズに利用を開始できるよう準備が可能です。

Q. デイサービスと訪問リハビリは併用できますか?
A. デイサービスとの併用は可能です。
ただし、病院や診療所で提供されている外来リハビリとは併用できませんのでご注意ください。ご不明な場合は、ケアマネジャーや事業所スタッフにご相談ください。

CTLグループで訪問リハビリを行っている施設