ブログ検索

老健はずっと入所できない?平均期間、老健の活用方法、長期入所できる施設を徹底解説

身近な人の介護をするのは、要支援や要介護度に関わらず大変なものです。さらに、介護者も年齢を重ねていくと「持病の悪化」「突然の入院」といった状況も想定されます。今はどうにか自宅で介護できているけれど「そろそろ施設入所を考えなくては……でもどんな施設を選べばいいんだろう?」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

インターネットが普及したことで、最近の当苑(老人保健施設ビハーラ寿苑)では、事前に下調べしてから相談に来られるご家族が多い印象です。そもそもの介護保険制度の難しさもあいまって「調べたんですけどよく分からなくて」「老健ってすぐ退所しなきゃいけないんですよね?」などと不安な表情で尋ねてくる方もいらっしゃいます。 そこで、ずっと入所できる施設を探したいという方に向けて、老健の役割や特徴、活用場面、長期入所先の選択肢などをご説明します。

監修者

老人保健施設ビハーラ寿苑 支援相談員

岡庭 伸子

代表的な資格
社会福祉士
介護支援専門員
介護福祉士

目次

「ずっと入所」は可能?老健の役割と特徴

そもそも老健って?

介護老人保健施設は、自宅と病院の中間施設として、在宅復帰や家族の介護負担軽減を支援する施設です。そのため、退院後に自宅に戻るまでや、日常生活能力の低下時にまた自宅で生活できるようにする場面などで利用されています。

主な提供サービスは「医学的管理のもとでのリハビリテーション、看護、介護」となっており、その性質上、施設長(管理者)は原則医師と定められています。また、看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・介護支援専門員・管理栄養士・薬剤師などさまざまな専門スタッフが配置されています。

「ずっと入所」はできるのか

上で述べたように、老健は「在宅復帰」を目的とした中間施設のため、介護保険上の期限はないものの、原則として3~6カ月が入所期間とされています。結論として、一生涯の入所を目的とした利用はできません。

とはいえ、長期入所できる施設を探す人にも、実は非常に関係のある施設です。随所で老健を活用することで、ご本人が施設でよりよい生活を送れるだけではなく、ご家族が施設探し・入所手続きをスムーズにおこなえるなどのメリットがあります。

老健の実際の利用状況は?特徴を生かした活用方法

老健を活用できる場面

では、具体的に、老健をどうやって活用すればいいのでしょうか?

老健の本来の目的である在宅復帰支援の「在宅」には、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの施設も含まれているので、たとえば、これらの施設の入居準備期間に一時的な居場所として活用することができます。

ご家族も「施設に入ったら足腰が弱くなってしまいそう」と心配されることが多いので、老健でリハビリしてから施設へ入所していただくことをおすすめしています。また、入所後にもし日常生活能力が低下してしまっても、老健へ戻ってリハビリすることが可能です。 もちろん、状況によっては特別養護老人ホームなどへの入居も考えられます。老健にとっては在宅復帰率が下がってしまう案件ですが、ご本人とご家族の状況を踏まえて支援をさせていただくので、老健から特養へはいかせないということはありません。実際に特養へ入居される方も多くいらっしゃいます。

実際の平均所在期間

老健に入所したとして「3~6カ月で退所しなきゃいけないのに、次の施設探しが間に合うかしら」など不安な方もいらっしゃるかもしれません。実際のところでは期間が過ぎたからという理由で無理やり退所してもらうことはありません。3カ月ごとに医師・管理栄養士・看護師・支援相談員・担当リハビリスタッフで「入所継続判定会議」を行い、ご本人の心身の調子やご家族ご自宅の状況などを総合的に検討し、家に帰れそうか・次の施設に行けそうかを判断しています。 厚生労働省の調査によると、実際の平均所在期間は300日前後(約9~10カ月)となっています。自宅介護の準備をしたり、次に入所する施設を見つけたり……きっかり3~6カ月のあいだに整えるのは難しい場合もあり、それまではと入所を延長されることもしばしばあります。

厚生労働省:介護老人保健施設

お看取りも

施設によってはお看取りをすることもあります。「在宅復帰目的なのにお看取り?」と思われるかもしれませんが、昨今は入所者の高齢化(それに伴う医療依存度の高まり)もあり、必要な選択肢となってきているようです。2024年の介護報酬改訂において、看取り対応の強化としてターミナルケア加算等の見直しが行われました。

お看取りを希望して施設を終身利用できるといったものではもちろんなく、①医師が回復困難と判断する②ご本人とご家族に説明する③ご本人とご家族が延命治療を希望せず、施設でのお看取りを希望する④施設側が「看取り介護計画」を作成する、という流れではじめて施設でのお看取りに入っていきます。 当苑では②を「看取りカンファレンス」と呼び、施設にご家族をお招きして、医師・支援相談員・看護師・介護士・管理栄養士・リハビリスタッフ……と出席して行います。しっかりとご本人とご家族の意向をお聞きした上で、お看取りになったときには「その人らしい最期」を迎えていただけるよう看護・介護のケアをさせていただきます。普段は飲食物の持ち込みは原則禁止ですが、ご本人の好きな食べものなどをもってきていただいたりしています。

厚生労働省:令和6年度介護報酬改定の主な事項について

老健を活用しながら今後を考えるために知っておきたいこと

介護をされるご本人の身体の状況以外にも、介護には心の問題・お金の問題・介護者の状況といったさまざまな事情が絡んできます。「自宅にいさせてあげたい」「一緒に過ごしたい」という思いと「家でみるのが限界」「自分の体がつらい、休みたい」というのは共存する心情であり、そういった状況に対して支援するのが私たちの仕事でもあります。 老健を活用した場合、①自宅に戻る ②他の施設に入る といった選択肢があり、私たちがそれぞれどんなサポートをさせていただくか、以下にまとめました。

1.自宅に戻る

老健で3~6カ月リハビリをした結果、日常生活能力が向上して、ご家族も少し休んで気力が戻った、などの理由で在宅復帰を検討されるのも一つの選択肢です。この場合、再び日常生活能力の低下等で元の状況に戻ってしまうこともあるため、ご家族の介護負担を減らすために、入所期間中にプロの手を借りて在宅介護の準備しておくことをおすすめします。

介護保険サービスを活用する

ご自宅での生活において利用できるさまざまな介護保険サービスの利用を検討しましょう。各サービスのご説明は以下のページからご覧いただけます。また、介護保険サービスをご利用の際はケアマネージャーへの相談が必要ですが、もしケアマネージャーがついていない場合でも、老健の支援相談員がおつなぎできます。

住環境の整備

介護の負担になっているのは、高齢者が暮らしづらい家の状況にあるかもしれません。手すりやスロープを設置したり、車いすや介護ベッドなどの導入が効果的な場合があります。老健では「入所前後訪問指導」などでご自宅の環境を見させていただくこともしています。相談員やリハビリスタッフがご自宅を訪問し、段差はあるか、トイレの状況はどうか、などを確認します。その上で、住宅改修や福祉用具のご提案をさせていただきます。(※住宅改修に関しては、介護保険の住宅改修制度を活用も検討しましょう)

厚生労働省:介護保険における住宅改修

他の施設へ入居する

在宅介護が難しい場合、他の長期入所が可能な施設への入居も選択肢の一つです。どのような施設を探せばいいかは、ご本人のご意向・リハビリの進み具合・月々に支払える金額・地域の施設の空き状況など、さまざまなことを考慮しなければなりません。ご家族だけで調べて、考えるのは大変です。老健の支援相談員が施設探しもサポートし、担当のケアマネージャーとも連携するので、ぜひご相談ください。(ケアマネージャーがついていない場合は紹介もできますので、そちらもご相談ください) なお、施設さがしは、施設のしぼりこみ・見学・体験入居など、複数のプロセスが想定されること、それぞれ待ち時間が発生するかもしれないこと、人気の施設では入居待ちになるかもしれないこと、などを考えて、早めの準備をおすすめしています。

長期入所が可能な主な介護施設の種類と特徴

特別養護老人ホーム

  • 介護保険施設の一形態であり、要介護3以上を対象とした終身利用が可能な施設
  • 公的な施設のため費用は比較的安価ですが、人気が高いため入居待ちになることがある
  • 看取りに対応していることが多い
  • 多床室を基本とした「従来型」と個室を基本として少人数のグループごとにケアを行う「ユニット型」がある

ユニット型は利用料金が高いため空いていることが多く、経済的に余裕があればそちらをご紹介しています

介護医療院

  • 介護保険施設の一形態であり、要介護1以上、特に医療ケアを必要とする方が対象
  • 医師と看護師が常駐し、胃ろうや経管栄養など専門的な医療ケアも受けられる
  • Ⅰ型(重篤な身体疾患や身体合併症のある認知症高齢者対象)とⅡ型(老健と同等のケアを必要とする安定した容態の方対象)がある
  • 公的な施設のため費用は比較的安価であり、看取りも対応している

グループホーム

  • 認知症の高齢者が共同生活する施設で、認知症かつ要支援2以上の方が対象
  • スタッフが食事・入浴・排泄介助、日常生活の支援を行う
  • 1ユニット9名での生活となり、アットホームな雰囲気
  • 介護保険の適用+家賃・食費・日常生活費

住宅型有料老人ホーム

  • 民間運営の老人ホームで、介護度の高い方でも入居可能
  • 住宅契約のため、介護サービスが必要な場合は別途利用料が発生する
  • その分、生活支援サービスや生活の自由が大きい

介護付き有料老人ホーム

  • 民間運営の老人ホームで、介護度の高い方でも入居可能
  • 「特定施設入居者生活介護」に該当し、介護サービスが介護保険の適用となる
  • 日中の看護師の配置が義務付けられ、介護スタッフも24時間常駐
  • 費用は高額になりやすい傾向

サービス付き高齢者向け住宅

  • 「住まい」+「生活支援サービス」を基本とした、高齢者向けの賃貸式契約住宅
  • 自立~介護度の低い方が主な利用者層で、バリアフリーの住宅で自由な生活を送れる
  • 介護が必要な場合は、外部の介護サービスと組み合わせる必要があります

介護で疲弊する前に!専門家への相談を

老健は在宅復帰を支援するための施設ではありますが、ご自宅に戻る目的以外にも、他の施設へ入所するまでのADLの向上や維持など、さまざまな場面でご利用いただけます。また、老健の相談員は、ご本人やご家族の状況や事情をお聞きし、さまざまなサポートをすることができます。「長期入所できる施設に入れたいから、老健は頼れない」と選択肢から外さずに、まずはご相談ください。

介護には、ご本人の身体の状況以外にも、ご家族の状況・経済的な事情・気持ちの面の問題などさまざまな要素がからみあっています。ご家族の中で悩んで抱え込んでしまう前に、早めに専門家へご相談をおすすめします。

群馬県の地域包括支援センター一覧 ※地域名+地域包括支援センターで調べられます
ビハーラ寿苑の居宅介護支援事業所(☎027-269-1161介護支援専門員につながります)
≫民間の入居相談窓口(日本老人ホーム紹介サービスセンター等)、各施設のケアマネージャーなど

私たち老健は中間施設ではありますが、皆さんが自分らしく生活していくための支援を地域の関係施設と連携しながら行っています。「この場合はどこに相談すればいいんだろう」「この内容だと相談先は老健じゃないかも」と遠慮せず、どこに相談していただいても大丈夫です。介護保険制度は難しく、介護施設の種類もさまざまなため、私たちが適切な支援へおつなぎします。いちばん気軽に行けるところへご相談ください。