
老健の仕事内容|介護職の方に聞いた働き方やメリット・デメリット
介護老人保健施設(以下、老健)で働こうと思う方の中には、
「職場として、老健ってどんなところか気になる」
「実際の仕事内容はどんなことをしているの?」
「自分でも働けるかな?」
と、様々な疑問や不安を持たれている方も多いと思います。
この記事では、老健で働くことを検討しているあなたのために、実際の仕事内容やスケジュール、老健で働くメリットやデメリットなどについてまとめました。
この記事で、老健の仕事内容を少しでもイメージできるようになっていただければ幸いです。
監修者

老健は在宅復帰するための中間施設

老健は、病院と自宅の中間施設に位置します。介護が必要な状態の高齢者が、病院から退院したあと引き続きリハビリや生活動作の練習を行い、自宅に戻るために必要な体の状態を取り戻すための施設です。
最近では、“高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けるための考え方”である「地域包括ケアシステム」というものがあり、その中で老健は、医療・介護・福祉をつなぐ重要な役割を担っていると考えられています
地域包括ケアシステムの詳しい説明は下記をご参照ください。
老健の対象者
老健の入所対象者は、要介護1~5の介護認定をされた方、特定疾病を持つ40~64歳の方も入所の対象です。
老健の入所期間は、一般的に3~6か月程度とされており一時的な利用が前提となっています。
老健の対象者や施設に関する詳しい内容は、下記の記事でも解説しています。
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介護職が担う主な役割

老健での介護職の仕事は、利用者さんの日常生活のサポートや身体的な介護が中心です。他職種とチームで利用者さんと関わり、自宅に帰ることを目指した生活になるように日々関わっています。
具体的な業務内容
具体的には、下記のような日常生活をサポートしています。
- 食事(経管栄養管理補助も含む)
- 排泄(トイレ誘導、オムツ交換)
- 入浴(一般浴、機械浴)
- 着替え
- 洗面や整髪などの整容
- レクリエーション(集団での体操など)
- クラブ活動(作品作り、ボランティア対応など)
これらの業務内容をすべて介護職だけで行うわけではなく、必要に応じて看護師やリハビリスタッフなどと連携し、利用者さんをサポートしていきます。
コロナ禍前は、クラブ活動として地域のボランティアの方をお招きし、お祭りや動物とのふれあいなどの活動を行っていました。コロナ禍以降は、地域のボランティアの方をお招きするクラブ活動は減ってしまいましたが、施設内で実施できる活動を行っています。
様々な専門職種とチームで働く

老健では介護職のほか、医師や看護師、リハビリスタッフなど、様々な専門職種が働いています。それぞれの専門性を発揮しチーム全体で、ひとりの利用者さんを在宅復帰まで導きます。各職種の主な役割は、以下の通りです。
医師
利用者さんの健康管理をはじめ、状態に応じた治療や処置、薬の処方、他職種への指示出しなどを行います。施設の中で中心的な存在となり、様々な専門職をチームとしてまとめます。
看護師
医師の指示に基づき、看護ケアや医療的な処置を行います。交代で24時間看護師が常駐しているところも多いため、介護職の方と夜勤をする時には頼れる存在になってくれます。
理学療法士(PT)
医師の指示に基づき、主に起き上がりや歩行など、大きな動きの獲得を目指してリハビリを行います。福祉用具の選定なども行いますので、利用者さんの日常生活で困った場面では、相談しやすい存在です。
作業療法士(OT)
医師の指示に基づき、精神機能や日常生活動作能力の向上を行います。着替えや入浴など、日常生活に即した動きの獲得を目指します。理学療法士と同様に、福祉用具の選定や住宅の改修などにも関わります。
言語聴覚士(ST)
医師の指示に基づき、言葉や飲み込みなどのリハビリを行います。
食事の際のむせこみや、コミュニケーションの取りづらさなどは、言語聴覚士さんに相談すると良いでしょう。
介護支援専門員(ケアマネージャー)
利用者さんやご家族の希望を踏まえケアプランを作成し、各事業所やご家族などとの連絡・調整を行います。
支援相談員
支援相談員は、利用者さんやご家族の相談窓口となり、ご意向を聞いた上で多職種との連携や各施設や事業所などとの調整を行います。“支援相談員という名称は老健独自の名称で、特別養護老人ホームなど他の施設では生活相談員と呼ばれます。
管理栄養士
管理栄養士は、利用者さんの栄養状態の維持・改善を図るために、個別に栄養管理計画を立て食事形態の調整や、献立を作成しています。
老健で働く介護職のスケジュール例

実際の介護職のスケジュール例をご紹介します。
シフト制勤務
シフト制勤務となっており、早番、日勤、遅番、夜勤と4つのシフトで分かれています。
早番は8時~16時、遅番は11時~19時までの勤務となっています。
日勤帯のスケジュール例
日勤帯の主なスケジュールは下記の通りです。

レクリエーションでは、各職員がどのような内容だと利用者さんが喜んでくれるのかを考え、様々なレクリエーションを行っています。
入浴介助は、浴室内での介助で2名、脱衣所での介助や誘導を4名で行います。滑りやすい環境なので、常に様々な場所に目を配り入浴介助にあたっています。
夜勤帯のスケジュール例

夜だけオムツを着用される方もいらっしゃるので、日中オムツを着用していなくても介助が必要になる方もいらっしゃいます。
21時で玄関を施錠してしまうため、外部の方の訪問時間は終了です。
夕食は、時間を見ながら適宜食べる形になってしまいます。
夜間の巡視は自分の担当エリアを巡視しつつ、体位交換を一人で行います。
働く上で知っておきたい他の施設との違い

老健は、特養や病院などとは異なった特徴があります。代表的な施設や病院との主な違いを解説します
特別養護老人ホームとの違い
特養と老健の主な違いをまとめると以下の通りです。

病院との違い
老健は病状が安定し、入院の必要はないが自宅に戻るのには不安がある方が入所します。老健に入所する場合は、病状が安定していることが前提となりますので、病状が安定していない場合は、病院での加療を続ける必要があります。
老健で働くメリット

老健で介護職として働くメリットは、以下の通りです。
- 看護師さんがいるため、医療面で安心できる
- リハビリスタッフから介護に関するアドバイスをもらえる
- 利用者さんと関わりながら、様々な疾患やケースを学べる
- 在宅復帰という目標を持ちそれに向けたサポートができる
- 利用者様の自立度が高く、コミュニケーションを取りやすい
それぞれ解説していきます。
看護師さんがいるため、医療面で安心ができる
介護施設では、看護師が不在で介護職員だけになってしまう場面も。
この時に、「利用者さんに万が一のことがあったら」と考えたことがある介護職の方も多いと思います。
しかし老健では、看護師さんがいる時間が多いため、医療面に関しては看護師さんを頼る事ができます。“いざという時には看護師さんがいる。”この安心感はかなり大きいメリットの一つです。
リハビリスタッフから介護に関するアドバイスをもらえる
介護の方法を一通り知っていても、利用者さんの状態は千差万別です。その人によって、最適な介護の方法は異なります。老健では、体の状態をしっかりと把握しているリハビリスタッフから、何ができて何ができないのか、どのような方法なら動作ができるのかなど、さまざまなアドバイスをもらうことができます。
最適な方法を知る事で、自分の体を守る事にもつながります。
利用者さんと関わりながら、様々な疾患やケースを学べる
老健は基本的に短期の入所の方が多く、利用者さんの入れ替わりが多いのが特徴です。
その中で、様々な疾患や背景を持つ方に出会います。
利用者さんを通して、様々な疾患に関する知識や在宅復帰の事例などを学べることもメリットの一つです。
在宅復帰という目標を持ちそれに向けたサポートができる
老健は、病院と自宅の中間の施設のため、在宅復帰される方が多くいらっしゃいます。
そのため、老健で働くスタッフも日々の業務の中で、在宅復帰を目指した関わり方をしています。
今日1日、どのように生活するかという視点も大事ですが、中長期的な在宅復帰の目標を達成するという達成感も得られると思います。
利用者様の自立度が高く、コミュニケーションを取りやすい
入所の条件が要介護1以上のため、移動が自立されている方やコミュニケーションがとりやすい方もいらっしゃいます。利用者さんと色々なお話ができるところも魅力的なメリットの一つです。
老健で働くデメリット

老健で働くメリットがある一方、デメリットも考えられます。
- 年単位の長期の介護が少ない
- 医療寄りのサービスが多くなると在宅復帰が遅くなる
それぞれ解説していきます。
年単位の長期の介護が少ない
ケアプラン上でも老健への入所は3~6か月の入所目標でプランを立てているので、長くても6か月で在宅復帰できるように関わっています。
そのため、利用者さんとは1年単位で関わることが少ない傾向にあります。
医療的なケアの割合が多くなってきている
時代の変化もあるとは思いますが、老健で医療的なサービスを利用される方が多くなってきています。老健では設備や人員などが整っているため、医療的な処置ができますが、自宅では医療的な処置ができるのか心配になることがあります。介護職としては、ご自宅で必要になる医療行為が多くなってしまうと、帰られた後にご家族の負担が増えてしまうため、色々な介護負担軽減策を考える必要があります。
老健に向いている人

老健で働くのに向いている方は下記の通りです。
- コミュニケーション力が高い人(利用者さん・職員含め)
- 介護や医療、リハビリに興味がある人
- 人を喜ばせるために考えられる、柔軟に発想を変えられる人
コミュニケーション力は、利用者さんや職員と関わっていく上でかなり重要になります。コミュニケーション力があることで、施設の雰囲気にも早くなじむことができ、利用者さんとの関係性構築にも役立ちます。
また、介護だけでなく医療やリハビリに興味がある人の方が向いていると思います。老健では、医療的な処置やリハビリが実施されています。介護だけでなくこれらのことにも興味を持つことで、幅広い知識を吸収できます。
更に、様々な利用者さんに合わせて楽しんでもらえることを考えられる人や、発想が柔軟な人の方が老健には向いていると思います。利用者さんにより興味のある分野は違うため、様々な発想でレクリエーションを展開できる方の方が、より多くの利用者さんを楽しませることができると思っています。
老健で働く中で感じるやりがい

老健で働いて実際に感じたやりがいについて、ご紹介します。
利用者さんの状態が回復していくのを見られたとき
ごはんを一切食べないと病院より申し送りされていた人が、ごはんを全部食べてくれた例を経験しました。栄養状態が整うことで、身体面・精神面など、色々なものが改善していく姿を見ることができました。病院ではできなかったことが、老健ではできたときはかなりうれしく思います。
上記の方の例以外にも、利用者さんの状態が良くなっていく経過を見られることは楽しいし、うれしいと思います。
利用者さんが喜んだり楽しんだりしてくれたとき
ビハーラ寿苑には、モザイクアートやペーパークラフトなど、様々な作品を作成し掲示しています。利用者さんによって、喜んでくれるポイントは違います。どのようなことをすれば喜んでくれるのか、自分も楽しみながら利用者さんが喜んでくれることを探しています。
老健で働いていて大変だと感じること

実際に働いていると、少し大変だと思う点もあります。現場で感じている大変なことを紹介します。
利用者さんとの信頼関係を構築すること
老健の特徴として、利用者さんの入れ替わりが多いという特徴があります。
そのため、信頼関係を築けたと思ったら退所になってしまうこともあります。
しばらくすると次の利用者さんが入所されてきますので、信頼関係を新たに構築しなければいけません。新しく信頼関係を構築し続ける点は、老健ならではの大変なポイントです。
介護職の人員が少ない時
日によっては、急な休みやほかの業務との兼ね合いで、現場に人が少ない時があります。このような日は、仕事量が増えてしまうため大変です。
また、介護業界全体に言えることですが、人材不足と職員の高齢化も問題になっています。実際、定年に近い方も介護職として働いています。スタッフの数が少ない時は、仕事が少し大変になってしまいます。
老健で働くための資格とキャリアパス

介護職として働く上で必須な資格はありませんが、介護職員初任者研修以上の資格があると良いですね。職員には、介護福祉士の資格を持っている方や、ケアマネージャーの資格取得に向けて頑張っている方もいます。
様々な資格を取得すると、疾患や制度など利用者さんに関連する様々なことの理解度が上がり業務の幅も広がりますので、チャレンジしてみたい人は、上位資格を目指してみてください。
まとめ
介護職の方は、老健において欠かせない存在です。
日々の生活を支える中で、医師や看護師、リハビリスタッフよりも利用者さんの小さな変化に気づきやすく、ご家族がご自宅で介護するときの負担まで考えてサポートできます。
老健は、医師・看護師・リハビリスタッフなど多職種が協力しながら利用者さんの支援をするため、働きながら医療やリハビリの知識にも触れられ、時には相談できることが大きな魅力です。
働きながら介護福祉士などの上位資格の取得チャンスがあるだけではなく、他分野の資格にも挑戦でき、キャリアアップのチャンスが広がります。
CTLグループの老人保健施設ビハーラ寿苑では、介護職の方を随時募集しております。
老健での介護職に少しでも興味がある方は、是非ビハーラ寿苑に見学にいらしてみてください。
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