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高齢者の一人暮らしで困ること5選|実際の事例・支援方法

高齢の親が一人暮らしをしていると、「このまま一人で生活を続けて大丈夫だろうか」と不安を感じることも多いのではないでしょうか。

近年、高齢者の一人暮らしは増加傾向にあり、詐欺や緊急時の対応、孤独死など、さまざまなリスクが考えられます。

この記事では、一人暮らしで起こりやすい困りごとや見守り方法、家族ができる支援まで、具体的にわかりやすく解説します。

目次

監修者

都丸 二三子
老人保健施設ビハーラ寿苑 居宅介護支援 管理者

都丸 二三子

代表的な資格
介護福祉士
主任介護支援専門員

高齢者の一人暮らしが増加中

近年、日本では高齢者の一人暮らしが着実に増えています。内閣府の「令和3年度高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者人口は約3,600万人を超え、今後も増加が見込まれています。その中で、配偶者と死別したり子どもと別居している方など、「誰とも同居していない高齢者」の割合も年々上昇しています。

こうした一人暮らしの高齢者が増えている背景には、さまざまな社会的要因があります。まず、少子高齢化や地方の過疎化により、近くに頼れる親族がいないという状況が増えています。さらに、都市部では共働き世帯が増え、家族が日中不在でサポートできないというケースも少なくありません。

また、本人の意思として「子どもに迷惑をかけたくない」「住み慣れた家でできるだけ長く暮らしたい」という思いから、あえて一人暮らしを選ぶ高齢者もいます。新しい環境に移ることへの不安や、介護施設への抵抗感なども理由の一つです。

しかし、体力や判断力が徐々に衰えていく中での一人暮らしには、事故や病気の発見の遅れ、孤独によるメンタルの低下など、多くのリスクが伴います。特に離れて暮らすご家族にとっては、親の変化に気付きづらく、「まだ一人暮らしで大丈夫だろうか…」と不安を感じる場面も増えてくるのではないでしょうか。

参考:内閣府「令和3年度高齢化の状況及び高齢社会対策の実施状況 令和3年度高齢社会対策」

一人暮らしで起こりやすい「困ること」5選

高齢の親が一人暮らしをしていると、「本当に生活できているのだろうか」「何かあったときにすぐ気づけるだろうか」と、不安が尽きないものです。

ここでは、実際に一人暮らしの高齢者によく見られる困りごとを5つ取り上げます。ご自身の親の生活状況と重ねながら、ぜひ確認してみてください。

食事・買い物の難しさ

一人暮らしでは、食事をきちんと準備することが難しくなりがちです。特に身体機能の低下や買い物の負担から、「菓子パンばかり」「1日1食しか食べていない」といった食生活の乱れが目立つようになります。

配食サービスもありますが、「味が合わない」「人に頼るのは嫌」という理由から利用を嫌がる方もいます。そうなると、栄養が偏り、筋力が低下し動けなくなり、食事がさらにおろそかになる、という悪循環に陥ります。やがて“低栄養”という状態にまで進行するケースも少なくありません。

転倒や病気など健康上のリスク

高齢者にとって転倒は深刻な事故の一つです。一度の転倒で骨折し、寝たきりになるリスクもあります。特に冬場は、寒さをしのぐために厚着をしすぎたり、靴下を重ね履きして足の感覚が鈍り、転びやすくなることも。また、電気代の節約のためにエアコンを我慢し、熱中症やヒートショックを起こす事例も報告されています。

こうした健康リスクが高まっても、本人が自覚しづらく、すぐに助けを呼べなかった結果、孤独死に至るケースも散見されます。

参考: 第5回孤独死現状レポート|一般社団法人少額短期保険協会

孤独感・うつ・認知症リスク

人や社会との関わりは、うつ状態の方にとって非常に重要です。家族との死別や、住み慣れた場所を離れるなど、様々なことがうつ状態の誘因になる可能性もあります。

実際にあった事例としては、親族を亡くしたことで急に引きこもりがちになり、誰にも気づかれずに生活が崩れてしまった事例もあります。発見された時には、家の中が排泄物だらけになっていました。支援の手を差し伸べ続けましたが、拒否される傾向が強く、支援が届かなかったケースです。

一人暮らしの方に地域の民生委員などが介入できることもありますが、その対応力には地域差があるのが現状です。

通院・緊急時の対応

急病や災害などの緊急時、一人で対応することは困難です。とっさの判断ができなかったり、搬送後に家族が駆けつけられないと、病院側とのやり取りや入院に必要な物の用意なども難しくなります。

実際に経験した事例では、ケアマネージャーが家族の代わりに救急車に同乗したり、入院手続きのサポートを行ったこともありました。

これは本来の業務ではないかもしれませんが、「関わっている以上はやらなければ」という使命感で動くケアマネージャーもいます。

特に、特定事業所の認定を持っている事業所では24時間の対応を求められることがあるため、このような事例が他にもあるかもしれません。

金銭管理のトラブル

お金の管理も、一人暮らしの高齢者が直面しやすい問題のひとつです。判断力や記憶力が低下すると、通帳や現金の置き場所を忘れてしまったり、ヘルパーや家族に対して「お金を盗られた」といった被害妄想を抱くこともあります。

実際に、被害妄想から警察を呼んでしまったという例もありました。

金銭管理を家族が代行するケースや、社会福祉協議会・成年後見制度を活用するケースもありますが、いずれも早めの準備と話し合いが重要です。

一人暮らしを支える「見守りサービス」とは?

高齢の親が一人暮らしを続けるうえで、不安を和らげるための手段として注目されているのが「見守りサービス」です。最近では、民間のテクノロジーを活用したサービスから、自治体が提供する地域密着型の支援まで、さまざまな選択肢が広がっています。ここでは、代表的な見守り手段を3つに分けてご紹介します。

民間サービス

見守りと聞くと監視のように感じる方もいるかもしれませんが、実際は「安否確認をさりげなく行う仕組み」が中心です。

たとえば、配食サービスの中には、単に食事を届けるだけではありません。

希望すれば玄関先で声かけを行い、反応がない場合はケアマネジャーや家族に連絡してくれる仕組みを備えたものもあります。

中には、リビングまで配膳してくれるサービスもあり、顔を合わせる機会を作ることが孤独感の緩和にもつながっています。

また、警備会社の高齢者向けサービスでは、万一の異常をセンサーで検知し、緊急時には駆けつける体制が整っています。

最近では、福祉用具の一環として見守りカメラも登場しており、生活の変化を見守れる仕組みあります。

行政サービス

一方で、行政による見守りも充実してきています。

たとえば前橋市では、ごみ捨てサービスの一環として、希望者に対して「ごみ回収時に声かけを行い、返答がない場合はケアマネに連絡する」という仕組みが整っています。

また、地域によっては民生委員さんが声をかけてくれる活動もあります。

これは、地域の一人暮らし高齢者の家に定期的に立ち寄り、「お元気ですか?」とひと声かけることで安否確認を行う取り組みです。

緊急通報装置やIoT機器の活用

さらに最近では、緊急通報装置やIoT機器を使った見守りも広がっています。代表的なものとしては、以下のような種類があります。

  • センサー型:動きが一定時間感知されないと、通知が届く
  • ボタン型:何かあった時にボタンを押すだけで通知が行く
  • ペンダント型:首にかけてお風呂場などでも使用できるタイプ

実際に、ペンダント型の通報装置を身につけたまま入浴している方もいらっしゃいます。

子どもができる支援

親の一人暮らしが心配になってきたとき、「何かしてあげたいけれど、どう関わればよいか分からない」という気持ちになる方も多いのではないでしょうか。ここでは、子ども世代ができる具体的な支援をご紹介します。

定期的な連絡や訪問、近居という選択肢

もっともシンプルなのが、こまめな連絡や訪問です。

「今日は何を食べた?」「少し散歩した?」といった会話の積み重ねが、親の様子の変化に気づく手がかりになります。

また、実家から遠くに住んでいる方の中には、「一緒に住むのは難しいけれど、何かあったときにすぐ駆けつけられるように」と、実家の近くに引っ越す=“近居”を選ぶ方もいます。

一方で、一緒に暮らすという選択をするご家庭もあります。

ただし、同居がすべての家庭にとって理想的とは限りません。仲が良くても、生活リズムや価値観の違いからストレスを感じ、結果的に食事を別々にとるようになるなど、心の距離が広がってしまうケースもあります。

医療・介護の現場では、「同居=安心」と見られることもありますが、実際には家族関係の変化にも注意が必要です。

孤独にさせない工夫

親の生活を支えるうえで、「孤独にさせない工夫」はとても重要です。身近に使えるサービスもありますので、生活に不安がある場合は検討してみましょう。

介護保険サービスを活用する

まず検討したいのが、介護保険サービスの活用です。

デイサービスや訪問介護など、専門職が支援に入ることで、身体的なケアだけでなく、社会との接点も生まれます。

成年後見制度を利用する

また、もし将来的に親が一人になってしまったときに備えるのであれば、成年後見制度の検討も有効です。認知機能が低下しても、財産管理や施設入所の手続きなどを後見人が代行してくれるため、安心して暮らしを続けることができます。

地域で人と関わる機会を作る

さらに、地域の交流サロンや体操教室、趣味活動などに参加することも、心の張り合いになります。

ただし、こうした場に出かけるには移動手段の確保が課題です。公共交通機関が不便な地域では、民生委員やご近所の方が送迎を行っている事例もあります。

一人暮らしを続けるべきか迷ったら?

親が高齢になっても「なるべく自宅で暮らし続けてほしい」と願うご家族は多いと思います。

しかし、年齢を重ねるごとに、生活の中で少しずつ「限界のサイン」が現れてくることがあります。

無理に一人暮らしを続けることで、転倒や病気、孤立といったリスクが高まるため、「そろそろサポートが必要かもしれない」と感じたら、早めに対策を考えることが大切です。

「限界」のサインを見逃さない

以下のような変化が見られた場合は、一人暮らしを続けることに無理が出てきている可能性があります。

  • 洗濯や掃除が行き届かず、身なりや部屋が不衛生になってきた
  • 食事の内容が極端に偏り、冷蔵庫の中が荒れている
  • ごみが溜まりはじめている
  • 面倒くさがるようになり、外出や趣味をやめてしまった
  • 電話ではしっかり話せるが、実際に会うと口数が少ない
  • トイレの失敗が急に増える
  • 病気の再発が続く
  • 家族が介護を限界と感じている

特に注意したいのは、「電話では普通に話しているのに、実際に会ってみたら様子がおかしい」といったケースです。毎日電話で話していても、生活の細かな変化には気づきにくいものです。

ときには、実際に家を訪れて、食事や清掃、トイレの状況などを目で見て確認してみましょう。

また、定期的に訪問してくれるヘルパーさんやデイサービスの職員などからの報告を受けて「限界の兆候」に気づくこともあります。

訪問看護師よりも日数的に関わる機会が多いため、こうした介護職の方々の声に耳を傾けることも大切です。

施設利用や通所サービスなど新たな選択肢の活用

「もう一人暮らしは難しいかもしれない」と感じたとき、選択肢は一つではありません。たとえば以下のようなサービスを活用することで、安全で安心な生活を継続することが可能です。

  • グループホーム:認知症の方が専門スタッフの見守りのもと、家庭的な雰囲気の中で生活できる施設
  • サービス付き高齢者向け住宅(サ高住):バリアフリー設計で、見守りや生活支援がついた賃貸住宅
  • ショートステイ(短期入所):一時的に施設に泊まり、介護や医療的ケアを受けられるサービス
  • デイサービス(通所介護):日中だけ施設に通い、入浴やリハビリ、食事などの支援を受ける

例えば、当法人が運営する清流館CTLでは、デイサービスの提供を通じて、日中の安心と交流をサポートしています。

また、老人保健施設ビハーラ寿苑ではショートステイや通所リハビリも可能です。

ご家族の予定や状況に応じて柔軟に利用できますので、まずはお気軽にご相談ください。

サービスの導入は「すぐに施設へ入る」という話ではありません。

必要な支援を少しずつ増やすことで、自宅での暮らしを安全に延ばす工夫も可能です。

その調整を行うのが、ケアマネジャーや地域包括支援センターの役割です。

「まだ早いかも」と迷っていても、現状の生活に不安を感じ始めたら、一度専門家に相談することをおすすめします。

状況に応じた支援の形を一緒に考えてもらえるはずです。

実際に体験した「一人暮らし限界」のサインとは

親の一人暮らしが限界に近づいていても、「まだ大丈夫」「手を出すのは早い」と、ご家族自身が認めたがらないケースは少なくありません。

特に子ども世代にとっては、元気だった親の姿が強く印象に残っており、体が弱り、認知機能が低下していくという現実を受け入れることが難しい場面も見られます。

あるご家庭では、親の変化に気づきながらも、子どもたちが生活に手助けが必要な現実から目を背けていました。

しかし、孫世代が冷静に生活の様子を観察したことで、親の身体機能や認知機能の低下が明らかになったという事例があります。

また、別の事例では、施設入所の決定権を持つ子どもがあまり介護に関わらず、日々の世話は別の家族が担っているというケースがありました。

その方は自身の体調も万全ではなかったにもかかわらず、「自分だけの判断では、親を施設に入れるわけにはいかない」と責任を抱え込み、結果的に共倒れ寸前まで追い込まれてしまいました。

このように、子ども同士の間で“親に対する思い”や“介護への温度差”が大きい場合、対応が後手に回ることがあります。

誰か一人に負担が集中するのではなく、話し合いの場を持ち、できるだけ客観的に状況を整理していくことが大切です。

ご家族の一人暮らしに不安を感じたら、まずはご相談ください

CTLグループは、医療・介護・福祉の各分野が連携し、グループ全体の力で利用者さんを幸せにできればと考えています。

介護老人保健施設やサービス付き高齢者向け住宅の運営をはじめ、居宅介護支援、ショートステイ、通所リハビリ、訪問リハビリ、デイサービスなど、多様なサービスを通じて、一人ひとりに合った支援をご提案いたします。

「親の一人暮らしが心配になってきた」「まだ施設に入るほどではないけれど、今後が不安」「ちょっと気になることがある」——このような時には、お気軽にご相談ください。

ご本人やご家族にとって、最適な選択を一緒に考えていきましょう。