居宅介護支援

介護が必要になったとき、「どこに相談したらいいんだろう?」「何から始めたらいいの?」と迷ってしまう方も多いと思います。

この記事では、居宅介護支援事業所やケアマネージャーの役割、利用の流れや費用について、できるだけわかりやすくまとめました。初めて介護に関わる方でも安心できるようにご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

監修者

都丸 二三子
老人保健施設ビハーラ寿苑 居宅介護支援 管理者

都丸 二三子

代表的な資格
介護福祉士
主任介護支援専門員

居宅介護支援とは

居宅介護支援とは、利用者さんが自宅で介護サービスを利用しながら、自立した生活を支援する事業所です。

居宅介護支援では、介護のプロであるケアマネージャー(介護支援専門員)が、利用者さんやその家族と相談しながら、どんな介護サービスが必要かを考え、計画を立てます。

また、病院や役所と連携して、利用者さんが安心して暮らせるようサポートすることも重要な役割として注目されています。

さらに、ご自宅や病院だけでなく介護付きのマンション(住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅)に住んでいる方が、どんな介護を受けるかを調整する仕事もあります。

この事業所には、管理する人として主任ケアマネージャーを必ず置く決まりがあり、ケアマネージャー1人が担当できる利用者さんの数は、45人までと決められています。

このルールがあることで、一人ひとりに合った介護サービスをしっかり提供できる仕組みになっています。

参考:厚生労働省 居宅介護支援

ケアマネージャーの仕事

ケアマネージャーは、介護が必要な人が安心して生活できるようにお手伝いをする専門家です。

高齢の方や体が不自由な方、その家族から相談を受けて、ピッタリの介護サービスを見つけ、調整するのが仕事です。

相談にのる仕事

ケアマネージャーは、「どんな介護が必要なのか?」を利用者さんや家族と一緒に考えます。

たとえば、「デイサービス(昼間に施設で過ごすサービス)を使いたい」「ヘルパーさんに家に来てもらいたい」といった希望を整理し、必要なサービスにつなげます。

ケアプランをつくる仕事

ケアマネージャーは、利用者さんがどんな介護を受けるのかを計画する「ケアプラン」を作成します。

体調の変化などで状態が変わったときにはプランを見直し、より良い介護が受けられるよう調整します。

お金の管理(給付管理表の作成)

介護サービスを使うと、費用がかかりますが、その計算や手続きはとても大変です。

そこでケアマネージャーが「給付管理表」という書類を作り、自治体に申請をする請求業務も行っています。

介護保険の手続きを手伝う仕事

介護サービスを利用するには、役所への申請が必要です。

「役所まで遠くて申請できない」

「申請に行く体力がない」

など、様々な理由で申請ができない人がいらっしゃいます。

このような時は、ケアマネージャーに相談すれば手続きを代行してくれますので、頼ってみてください。

いろいろな施設や役所と連絡をとる仕事

ケアマネージャーは、デイサービスやヘルパーさんのスケジュールを調整したり、自治体や地域の担当者と連携したりして、利用者さんが安心して介護を受けられるようにスケジュール調整をします。

役所や地域の相談窓口と協力する仕事

ときには、介護以外の相談を受けることもあります。

相談内容によっては行政の力が必要なこともあるので、役所や地域の相談窓口と連携し、より良いサポートを受けられるようにします。

退院や施設入居のサポート

病院から退院するときや、介護施設に入るときも、ケアマネージャーが手続きをお手伝いします。

最近では施設を紹介してくれる会社も増えており、ケアマネージャーの仕事の負担も軽くなっている部分もあります。

ケアマネージャーは家族の相談役でもある

ケアマネージャーは、高齢の方だけではなく、その家族の悩みにも向き合います。

たとえば、息子さん夫婦のことやお孫さんの引きこもりの問題のことなど、相談に乗るケースは多種多様です。

家族間でも、必要な支援をしていないケースがまれに見られるため、介護認定を受けているご本人以外の問題に直面し、対応が必要になることもあります。

このような場合は、行政への連絡と連携をし、家庭の問題に対してアプローチしていきます。

参考:厚生労働省 介護支援専門員(ケアマネージャー)

コラム:ヤングケアラーの現実と多職種連携による支援

近年、社会問題として注目されている「ヤングケアラー」。

本来ならば学校へ通い、友達と遊び、のびのびと成長するはずの子どもたちが、家族の介護や世話を担い、日常生活に大きな影響を受けているケースが増えています。

実際に、スタッフが経験した事例を一部ご紹介します。

ある日、包括支援センターから連絡がありました。

「お孫さんが学校に行けていない」

「利用者さん(高齢者)の生活が維持できていない」

「家庭内で金銭的なネグレクトを受けているかもしれない」

という深刻な内容でした。

このケースでは地域個別会議を開き、子供支援課、障害支援課、学校関係者、家族などにアプローチし、多職種連携で状況を把握し、問題を解決していきました。

こうしたケースでは、単に介護サービスを提供するだけでは解決できません。

高齢者本人の問題だけでなく、その家族、特に子どもたちへの支援が求められるのが現状です。

ケアプランの作成

ケアプランは、利用者さんの意向を第一に、ご家族のご意向も取り入れ、その方の心身の状態が良い方向へ向かい、日常生活の自立ができるように支援するための計画書です。

この計画がないと、介護サービスを利用することができません。

ケアプランは利用者さんやご家族の意向を元に作られるものの、介護が必要な人の体調は変わりやすく、最初の計画どおりに進まないことも多いのが現状です。

このような場合は、適宜ご家族や利用者さんの希望を聞き、意向に合わせてプランを再調整していきます。

居宅介護支援事業所を利用するための手順と流れ

「家族の介護が必要になったけど、どうすればいいの?」と不安に思う方もいるかもしれません。
ここから、居宅介護支援事業所を利用するための流れを、わかりやすく解説します。

どんな人が利用できるの?(対象者)

居宅介護支援事業所を利用できるのは、要介護認定(1~5)を受けている方です。
また、要支援と認定された方も、地域包括支援センターと契約している事業所なら利用できます。

ただし、事業所によって対応できる範囲が異なるため、詳しくは事業所に問い合わせてみてください。

居宅介護支援事業所を利用する4つのステップ

  1. 介護認定を受ける(市役所・包括支援センターで相談)

    まずは、市役所や地域包括支援センターに相談し、要介護認定を申請します。
    ただし、市役所では特定の事業所を紹介することはできません。
    代わりに、事業所の一覧リストをもらい、その中から自分で選ぶ必要があります。

  2. 居宅介護支援事業所を選ぶ

    事業所は利用者さんやご家族に決めていただきます。

    • 家から近い事業所がいいか?
    • ケアマネージャーが親身になってくれそうか?
    • 希望するサービスを提供できるか?

    など、選ぶ基準は人により様々です。ご家族やご友人からの紹介で選んでいただいても大丈夫です。

  3. 居宅介護支援事業所と契約をする

    利用する事業所が決まったら、契約を交わします。
    契約の際には、次のような説明を受けます。

    • どんなサービスが受けられるのか?
    • 重要事項の説明
    • 契約書の内容

    介護保険制度は3年ごとに変わるため、契約書の内容も更新されることがあります。契約書の変更が生じる場合は、適宜お知らせをして、同意をいただくようにしています。

  4. ケアマネージャーが決まる

    ケアマネージャーが多い事業所では、担当するケースによって適切なケアマネージャーさんが選ばれます。

    • 医療的なケアが必要な人 → 看護師の資格を持つケアマネージャーが担当することも
    • 認知症のケアが必要な人 → 認知症対応の経験があるケアマネージャーが担当することも

    ケアマネージャーの中には、基礎資格に看護師の資格を持っている方もいますので、医療的な観点が必要な場合は、看護師経験・資格があるような方が選ばれます。

ケアプラン作成の6つのステップ

ここからはケアプランの作成の流れを6つのステップで解説します。

  1. 利用者さんの状況を把握する(アセスメント)

    ケアプランを作る前に、ケアマネージャーが利用者さんや家族に話を聞き、体の状態や生活の様子、家族構成などを把握し、利用者さんが何を望んでいるのか理解します。
    これを「アセスメント」といいます。

    ケアマネージャーが持っている情報だけではなく、時には連携している他の職種とも情報交換を行い、総合的に状況を把握するのです。

  2. ケアプランの骨組みを作る

    アセスメントの情報をもとに、ケアマネージャーがケアプランの「たたき台」を作ります。
    現状の心身の状態に合わせ、利用者さんが納得するものをサービスとして組み込んでいきます。

  3. サービス担当者会議(関係者の打ち合わせ)

    ケアプランの方向性が決まったら、本人・ご家族にプランを説明します。
    サービスの利用が決定したら、利用者本人・家族・関係者が集まり「サービス担当者会議」を開きます。

    この会議では、体の状態に合わせた注意点や支援のポイントなどを話し合い、みんなが納得すれば正式にケアプランが決まります。
    ここから介護サービスの利用がスタートします。

  4. 状況に応じてサービスを調整する

    介護の計画は、一度決めたら終わりではありません。途中で変更が必要になることもあります。
    たとえば、

    • 「デイサービスに行きたくなくなった」 → 回数を減らす・別のサービスを考える
    • 「お金の負担が大きい」 → 負担を減らす方法を考える
    • 「体調が悪化した」 → もっと手厚いサポートに切り替える

    このように、利用者の状態に合わせて、柔軟にサービスを見直します。

  5. 医師との連携

    介護を受けるには、医師の意見も大切です。特に、介護認定を受けるときには主治医(かかりつけ医)の意見書が必要です。
    また、訪問看護や医療的なサービスを利用する場合は、主治医の指示がなければ受けられないものもあります。
    そのため、ケアマネージャーは医師としっかり連携をとりながら、必要な介護サービスを整えていきます。

  6. 定期的に訪問して確認する(モニタリング)

    ケアマネージャーは、サービスがちゃんと機能しているかを確認するために、月に1回程度、自宅を訪問します。 これを「モニタリング」といいます。
    また、デイサービスの職員やヘルパーさんとも情報を交換し、利用者の変化を細かくチェックします。状況に応じて電話での聞き取りをしたり、必要があれば追加の訪問をすることもあります。

居宅介護支援の費用

「居宅介護支援を利用するのに、いくらかかるの?」

と気になる方もいらっしゃると思いますが、実は、居宅介護支援の利用にあたって、利用者さんが直接費用を支払うことはありません。

居宅介護支援に入るお金は、以下のように負担されています。

  • 介護保険から50%
  • 行政(市区町村)から50%

利用者さんから直接費用をいただくことはありませんので、ご安心ください。

コラム:在宅での看取りが増えている理由

近年、「自宅で最期を迎えたい」と希望する方が増えています。

これは、訪問診療を行う医師が増え、在宅で受けられる医療や介護サービスが充実してきたことが大きな要因です。

以前は「病院で最期を迎えるのが当たり前」と考えられていましたが、今では「住み慣れた自宅で、家族に囲まれて穏やかに最期を迎える」ことが可能になってきました。

私たちが支援したケースの中にも、家族と本人の想いを大切にしながら、最期まで自宅で過ごすことができた事例があります。

「望む形で見送れた」ご家族の言葉

ある方は、私が担当して10年近く支援を続けていた利用者さんでした。元気な頃からの関わりがあり、生活の変化を見守りながら支援を続けてきました。

ある日、訪問診療の医師から「もう厳しいかもしれない」と告げられ、ご家族は覚悟をしながらも、なかなか受け入れることができず、心の葛藤を抱えていました。しかし、訪問看護やケアマネージャーが寄り添いながら、本人・家族の気持ちを尊重し、できる限りのサポートを続けました。

結果として、ご家族は次のように話してくれました。

「本当に最期までニコニコしていたんです。本当に良かった。お家で看取れて。
看護師さんに協力してもらいながら、最後ギリギリまでデイサービスでお風呂にも入れてもらえた。寝たきりになっても数か月で苦しまずに最期を迎えることができたので、本人が望む生活ができたと思うし、家族の想いを貫くこともできました。」

このような支援ができたとき、「本当に利用者さんやご家族が望む支援ができた」と実感しました。

ご家族の立場になると、介護をやり切った感覚は持ちにくいものです。

あとから「もっと○○ができたのではないか」と後悔をする方も少なくありません。

ケアマネージャーとして、利用者様が亡くなった後のご家族のケアもさせていただいています。

居宅介護支援を選ぶ際のポイント

介護が必要になったとき、どの居宅介護支援事業所を選ぶかはとても大切なポイントです。ここでは、居宅介護支援の選び方について、分かりやすくご紹介します。

話を聞いてくれるか

まず一番大切なのは、利用者さんや家族の話をしっかり聞いてくれるかです。

  • 利用者さんの訴えに耳を傾けてくれる
  • サービス内容を柔軟に変更してくれる
  • 複数の選択肢を提案してくれる

「事業所の都合」ではなく、利用者本位のサービスを考えてくれる事業所を選びましょう。

特に、特定事業所加算を算定している事業所は、他の同事業所と事例検討会を行う必要があります。事例検討では、困難な例や特殊な例などの事例が共有されますので、視野が広く様々な選択肢の提案が期待できます。

自宅から近いか

自宅との距離も重要な要素です。

自宅と居宅介護支援との距離が近いと、緊急時の対応や定期的な訪問などがスムーズに行われます。

特定事業所加算を取得しているか

特定事業所加算とは、様々な基準を満たしている事業所に認められる加算です。 特定事業所加算を取得している事業所は、このような特徴があります。

  • 主任ケアマネージャーが多い
  • ケアマネージャーの人数が多い
  • 24時間連絡が取れる体制がある
  • 困難な事例にも対応できる
  • 定期的な研修や事例検討会を実施している
  • ヤングケアラーなど幅広い支援が可能

厚生労働省の“介護サービス情報公表システム”で、特定事業所加算を取得しているかを検索できます。

参考:
厚生労働省 介護サービス情報公表システム

併設しているサービスばかり勧めてこない

居宅介護支援事業所によっては、自社グループ内のデイサービスや訪問介護を優先的に勧めてくる場合もあります。

もちろん併設サービスが悪いわけではありませんが、本当に利用者にとってベストな選択肢を提案してくれるかが重要です。

複数のサービスを紹介してくれるか、選択肢を提示してくれるかをチェックしましょう。

ケアマネージャーとの相性

実際に担当するケアマネージャーとの相性もとても大切です。

  • 相談しやすい雰囲気があるか
  • 親身に話を聞いてくれるか
  • 専門知識を分かりやすく説明してくれるか

介護は長期にわたる支援になることが多いため、信頼できる担当者と出会うことが大切です。

よくある質問

居宅介護支援事業所と地域包括センターの違いは何ですか?

居宅介護支援と地域包括支援センターの違い

居宅介護支援事業所:要介護1以上の方(契約すれば要支援の方も対応可能)介護認定を受けている方の相談を担当

地域包括支援センター:当該地域に住んでいる65歳以上の高齢者全員が対象となります。保健師や社会福祉士、看護師などのスタッフもいます。

介護認定は受けていないが、体に少し問題があるような方も担当しており、高齢者だけでなく地域のお困りごとを幅広く受け入れていく場所です。

そのほか、虐待、ヤングケアラー、児童、一般の方等も受け入れている総合窓口です。

中には「隣の植木が…」「近所の猫がうちにトイレしちゃって…」などの相談を受けることもあるそうです。

CTLグループでは、居宅介護支援も運営しています

CTLグループが運営する老人保健施設ビハーラ寿苑内には、居宅介護支援も併設しています。

事業所には主任介護支援専門員が在籍し、幅広いケースを担当。介護保険をお持ちで無い方や、介護・在宅での生活に不安がある方の相談を幅広くお受けしています。

お気軽にご相談ください。

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